『キャプテン・マーベル(2019)』ネタバレあり イースターエッグ/解説『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)』前のおさらいに
『キャプテン・マーベル(2019)』
ありがとう、スタン・リー
本作は2018年11月12日に逝去したアメリカンコミックスの巨匠スタン・リーへの追悼から始まる。
『ドクター・ストレンジ(2016)』から使用されているマーベルスタジオズのモーションロゴの映像がスタン・リーが今までMCU作品にカメオ出演した際のものに差し替えられており最後に「Thanks Stan (ありがとう、スタン)」と表示される。
通常のマーベルスタジオズのモーションロゴ
ちなみに3月8日に公開された『スパイダーマン/スパイダーバース(2019)』でもスタン・リーへの追悼がされている。是非ご自身の目で確認してきていただきたい。
クリー人
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』やドラマ『エージェント・オブ・シールド』などにも登場した高度な文明を持った種族。
本作のクリー人
エージェント・オブ・シールドのクリー人
原作のクリー人
スクラル人
DNAごと他の種族に擬態できる能力を持った侵略宇宙人。
本作のスクラル人
原作のスクラル人
ちなみに『アベンジャーズ(2012)』に登場したチタウリ人は原作では別次元の世界のスクラル人という設定だが本作を観た感じMCUでは別物という設定のように思える。
もしくはロキが『アベンジャーズ(2012)』でNY上空に開けたゲートは実は別次元の宇宙に繋がっていたとすれば原作通りと考えることもできる。
『アベンジャーズ(2012)』のチタウリ人
原作のチタウリ人
原作のオリジン
原作のキャプテン・マーベルはもともとマー・ヴェルという名のクリー人の男性が名乗っていた名前でだった。
アメリカ空軍士官だった地球人のキャロル・ダンバースはマー・ヴェルと共に爆発事故に巻き込まれた際彼のDNAと結合。フォトンブラストや怪力、飛行能力などが発現しミズ・マーベルと名乗りヒーロー活動を始める。
マー・ヴェルと爆発に巻き込まれるキャロル『Captain Marvel#18 (1969年)』より
その後キャロルは触れた相手の能力を奪うミュータント、ローグによりパワーと記憶を奪われる。
ローグに能力を奪われるキャロル『Avengers Annual#10 (1981年)』
1994年から日本でも放送されていたX-MENにもこれに酷似したシーンが存在する
能力を奪われてしまっていたキャロルだったがX-MENたちとともに行動していた際、侵略宇宙人であるブルードの潜在的な能力を発現させる装置を使った人体実験を受けさせられた。
この人体実験によりキャロルはホワイトホールをエネルギー源としたスーパーパワーを取得。新たにヴァイナリィというヒーロー名を名乗るようになる。
新たな力を発現しヴァイナリとなったキャロル『Uncanny X-Men#164 (1982年)』
原作コミックスの『Civil War(2006年)』の原因を作ったことで有名な自爆と再生能力を持ったヴィラン、ナイトロの発する毒ガスを吸ったマー・ヴェルがガンで死亡。キャプテン・マーべルの座は一時的に空席となる。
ヒーローたちに看取られながら息をひきとるマー・ヴェル『The Death of Captain Marvel (1982)』より
ホワイトホールとの繋がりを失い、ヴァイナリィとしての能力が弱体化。本来のミズ・マーベルとしての能力が復活したキャロルは新たにウォーバードと名乗り、アベンジャーズに参加することとなる。
ウォー・バード(キャロル・ダンバース)
キャロルはキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースにキャプテン・マーベルと名乗るよう提案され、2012年からキャプテン・マーベルと名乗るようになった。
スティーブ・ロジャースにキャプテン・マーベルと名乗るよう勧められるキャロル『Captain Marvel (2012)』より
マー・ヴェル
原作のマー・ヴェルはクリー人の男性だが本作では女性であり、地球に潜入しライトスピードエンジンの開発を行っていた。
上記の通りヴィランの毒ガスによってがんを発病し死亡しているが何度も復活しては地球の危機を救うために己を犠牲にし戦死を繰り返している。
原作のマー・ヴェル(左)と本作のマー・ヴェル(右)
キャプテン・マーベルの名はキャロルの他に下記のモニカ、マー・ヴェルの息子のジーニス・ベル、ゴキブリのDNAを持ったクリー人のノー・ヴァー、マー・ヴェルに擬態したスクラル人のコーン・ノル、マー・ヴェルの娘のフィラ・ヴェルなど、今までに複数の人物が引き継いでいる。
ちなみに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではマー・ヴェルの息子であるジーニス・ヴェルのキャプテン・マーベルらしき映像がノバ軍の司令室のモニターに映し出されている。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』より
スターフォース部隊
キャロルの所属するクリー人のエリート部隊。
・ヨン・ロッグ
スターフォース部隊のコマンダーにしてキャロルのメンター的存在だったが実際はキャロルの記憶を書き換えクリー人の戦闘員に仕立て上げた本作の黒幕。
原作にも同名のクリー人のキャラクターが存在し、キャロルがパワーを得るきっかけとなった爆発は彼と初代キャプテン・マーベル(マー・ヴェル)の戦闘が原因である。
また原作ではマクニトロンという別名を持っている。
本作のヨン・ロッグ
原作のヨン・ログ(マクニトロン)
・ミン・エルヴァ
スターフォース部隊のスナイパー兼遺伝子学者。6年前にヨン・ロッグに付き添って地球に訪れており、キャロルがライトスピードエンジンによってパワーを発現させるのを目撃している。
原作のミン・エルヴァは遺伝子操作によりクリー人をより強力な種族へと進化させる研究に陶酔している科学者であるが、あまりにも過激な実験なためそれに反対したキャプテン・マーベルと敵対関係になり度々衝突している。
本作のミン・エルヴァ
原作のミン・エルヴァ
・アット・ラス
原作のアット・ラスはキャプテン・アトラスという別名を持ち、クリー人の軍隊を率いるリーダーである。
本作のアット・ラス
原作のアット・ラス
・ブロン・チャー
原作のブロン・チャーはルナティック・レギオンというクリー人傭兵部隊のメンバーである。地球に訪れた際にキャプテン・アメリカやアイアンマンと交戦した。
本作のブロン・チャー
原作のブロン・チャー
ロナン・ジ・アキューザー
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』にも登場したクリー帝国の法執行人。コズミックロッドと呼ばれるスレッジハンマー状の武器を持つ。
ヴィランではあるがクリー帝国の平和を第一と考えており、利害が一致すればヒーローとも共闘する。
MCUではドラックスの妻子を殺害したことになっているが彼曰く「記憶にない」とのこと。サイコである。
本作のロナン・ジ・アキューザー(中央)
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』のロナン・ジ・アキューザー
原作のロナン・ジ・アキューザー
コラス・ザ・パーサー
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』にも登場したロナンの腹心であるクリー人。
本作のコラス・ザ・パーサー
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』のコラス・ザ・パーサー
原作のコラス・ザ・パーサー
タロス
スクラル人を率いるリーダー。
原作のタロスは擬態能力を持たないスクラル人の傭兵である。
本作のタロス(右)
原作のタロス
マリア・ランボー/モニカ・ランボー
本作ではNASA時代のキャロルの相棒として登場したマリア・ランボーやその娘のモニカ・ランボーは原作にも登場する。
本作のマリア・ランボー
本作のモニカ・ランボー
ちなみにモニカ・ランボーは原作ではキャロルよりも先にキャプテン・マーベルを名乗っていた人物である。しかし、彼女のオリジンにはクリーは関係しておらずエナジー・ディスラプターという装置を破壊した後に謎の光に包まれ能力を発現させた。
また映画終盤、モニカからコートを返されたキャロルがスーツの上から羽織るというシーンがあるが、スーツの上からコートを羽織るのはモニカ・ランボーのキャプテン・マーベルのスタイルである。
謎の光に包まれるモニカ『Avengers#227 (1982年)より』
キャプテン・マーベル/スペクトラム(モニカ・ランボー)
ちなみに、モニカはキャプテン・マーベル以外にもフォトン、パルサー、スペクトラムなどのヒーロー名を持っておりフォトンとは本作のマリアとモニカのミドルネームであることがマリアの戦闘機に書かれた名前から分かる。
戦闘機に書かれた名前に注目
『ライトスタッフ(1983年)』
地球に不時着したキャロルがブロックバスタービデオ店で手にしたVHSは『ライトスタッフ(1983年)』 。
この映画は米軍の戦闘機パイロット達がNASAのマーキュリー計画で宇宙に行く話であり本作の内容と酷似している。
『ライトスタッフ(1983年)』
今回のスタン・リー
今回のスタン・リーはキャロルが人間に擬態したスクラル人を追って乗り込んだ電車内で映画『モール・ラッツ(1995)』の台本を読んでいた。
スタン・リーは実際にこの映画に出演しておりとてもありがたいお話をしているのでまだ観たことのない人は是非観ていただきたい。
『モール・ラッツ(1995)』より
ケリー・スー・デコニック
キャロルが駅構内で逃走したスクラル人を探すシーンで原作コミックの『キャプテン・マーベル』でライターを務めていたケリー・スー・デコニックがカメオ出演している。
ケリー・スー・デコニック
ちなみに彼女の夫は同じくコミックライターのマット・フランクション。最近では『ホークアイ』の原作を担当していてコミックのアカデミー賞的賞であるアイズナー賞を受賞している。
マット・フランクション
アイズナー賞を受賞した『ホークアイ』
ナインインチネイルズ
クリーのスーツから着替えたキャロルが着ているTシャツはナインインチネイルズのものである。
本作より
ペガサス計画
ウェンディ・ローソン博士(マー・ヴェル)がライトスピードエンジンの研究を行っていた計画。
ペガサス計画というプロジェクト名は今までにもMCUに登場しており。『アベンジャーズ(2012)』でテッセラクト(4次元キューブ)を使った実験を行っていたのもこのペガサス計画である。
ライトスピードエンジンのエネルギーソースがテッセラクトであることを考えるとテッセラクト関連の研究は全てペガサス計画ということだろうか。
『アベンジャーズ(2012)』のペガサス計画
『アイアンマン2 (2010)』でトニー・スタークがペガサス計画に言及するシーン
原作のペガサス計画
ポケベル
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年)』のラストでインフィニティガントレットのパワーによって塵になってしまう寸前にフューリーが救援信号を送ったポケベルは本作でキャロルがフューリーに渡したものだということがわかった。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018年)』より
グース
可愛い猫の見た目をしているがその正体はフラーケンという危険な宇宙生物であった。
ちなみに名前の由来は戦闘機パイロットが主人公の映画『トップガン(1986)』に登場する人物の名前である。
原作ではキャロルの飼い猫がフラーケンであったが名前はグースではなくチューイ。こちらは『スターウォーズ』のチューバッカが名前の由来である。
本作のグース
原作のチューイ(フラーケン)
フューリーの左目
S.H.I.E.L.D.長官ニック・フューリーが左目を失明した理由は長い間MCUの謎の一つであったが本作で、上記のグースの仕業であったことが判明した。
本作のフューリー
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)』より
ちなみにグースに目を引っ掻かれるシーンでフューリーは"Mother Fuck'n!"と言わずに"Mother Flerken!(フラーケン)"と言っている。
これは"Fuck"などの言葉が使用されると全米映画業界(日本でいう映倫)にR指定乃至はPGをつけられてしまうからである。
クインジェット
キャロルとフューリー、グースが空軍基地から脱出する際に使用したのはMCUに度々登場しているS.H.I.E.L.D.の小型戦闘機、クインジェットのプロトタイプだ。
本作のクインジェット
『アベンジャーズ(2012)』のクインジェット
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)』のクインジェット
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)』のクインジェット
『パルプ・フィクション(1994年)』
タロスがマリア・ランボーの家に訪れた際、ジュースを飲んでいるがこれはニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソンが出演している『パルプ・フィクション(1994)』でサミュエルの演じているジュールス・ウィンフィールドがジュースを飲んでいるシーンと構図からカップの柄まで酷似している。
本作より
『パルプ・フィクション(1994)』
クリー人の血液
本作ではライトスピードエンジンの爆発に巻き込まれ、瀕死の状態に陥ったキャロルがヨン・ロッグの血液を輸血され死を免れたとされてます。
実はこれとほぼ同じことがドラマ『エージェント・オブ・シールド』で行われている。『アベンジャーズ(2012)』でロキにワンドで胸を貫かれ死亡したと思われていたコールソンでだが、地球で発見されたクリー人の遺体から採集した血液を輸血され、実はまだ生きている。
これはおそらく本作でクリー人の血液によって生きながらえたキャロルの例を参考にしたということだろう。
本作より
『エージェント・オブ・シールド』より
スーツ
キャロルは映画中盤で本当の敵はクリーだということに気がつきコスチュームの色を変化させ赤、青、金の原作準拠のカラーに変更した。
本作のスーツ
原作のスーツ
ちなみに、途中。コスチュームの色を白と緑に変更するがこの色の組み合わせは原作のクリー人兵士のコスチュームカラーのオマージュである。
原作より
ダーク・アスター
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』にて、ロナンの乗っていたクリーの宇宙船ダーク・アスターのプロトタイプと思われる宇宙船が登場する。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』のダーク・アスター
クリーのテクノロジー
スターフォース部隊のスーツや宇宙船のスペースジャンプなど。他のMCU作品で酷似した技術を散見することができるがおそらくクリー帝国の技術を応用したものだと考えられる。
本作より
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』より
本作より
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』より
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス(2017)』より
テッセラクト
本作終盤、マー・ヴェルのラボにライトスピードエンジンのエネルギーソースとして利用されていたテッセラクト(四次元キューブ)が登場します。
光速移動を目的としたライトスピードエンジンのエナジーソースが、インフィニティ・ストーンの一つ、空間を操るスペースストーンを内包するテッセラクトなのも納得がいく。
ペガサス計画にはS.H.I.E.L.D.が関わっているということなので『キャプテン・アメリカ: ファースト・アベンジャー(2011)』のポストクレジットシーンで海底に沈んだテッセラクトをハワード・スタークが発見し回収した後、マー・ヴェルが大気圏外のラボに持ち出し、今作でS.H.I.E.L.D.のもとに戻ってきたということだ。
また、キャプテン・マーベルのフォトンブラストの力の源がスペースストーンだということは、彼女がサノスに対抗する切り札になるということも考えられる。
『キャプテン・アメリカ: ファースト・アベンジャー(2011)』
スペース・インベーダー
マー・ヴェルのラボでスクラル人の子供が遊んでいたのはスペースインベーダーのピンボール。宇宙人が宇宙人を倒すゲームをやっているという皮肉か。
アベンジャーズの由来
フューリーは地球外生命体に対する抑止力として計画していたのはプロテクター計画というプロジェクト名だったがキャロル・ダンバースのミドルネーム"アベンジャー"から取ってアベンジャーズ計画に変更した(ここでアベンジャーズのテーマソングが流れる)
ポスト・クレジットシーン
その①: フューリーのポケベルを回収したアベンジャーズの生き残ったメンバーたちが発信されていた信号が途絶えたことを確認。どうにかして再起動を試みようとするが信号が途絶えたのはキャプテン・マーベルが発信元に到着したからであった。
アベンジャーズ達の前に姿を現したキャプテン・マーベル「フューリーはどこなの」と言って映像は終わる。
(ポストクレジットシーンでフェイク映像を使うとは考え難いので。このシーンはおそらく『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年)』本編からそのまま持ってきた映像と考えられる。)
その②: グースが飲み込んでいたテッセラクトをフューリーのデスクに吐き出す。
『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019年)』予告編