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映画『ロスト・バケーション(2016)』ネタバレあり レビュー 感想「大自然の中の壁の無い密室スリラー」

大自然の中の壁の無い密室スリラー

 

今回紹介するのは昨今のおバカサメ映画ブームに一石を投じる、本格派サメ映画

 

『ロスト・バケーション(2016)』

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監督

ジャウマ・コレット=セラ

 

役名/キャスト

ナンシー/ブレイク・ライブリー

カルロス/オスカル・ハエナダ

クロエ/セドナ・レッグ

ナンシーの父/ブレット・カレン

ナンシーの母/ジャネール・ベイリー

 

あらすじ

 サーフィン中にサメに襲われ片足を負傷したナンシー。間一髪のところで岩礁に登り、辛うじて難を逃れたのだが、時間が経つにつれ水位は上昇し徐々に行き場を失って行く。タイムリミットが刻々と迫る中、彼女は無事に陸に戻ることができるのか…

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※ここから先はネタバレを含みます※

 

 

あえてPOV映画にしない姿勢

 本作にはGoPro(体に取り付けて使う小型のカメラ)がキーアイテムとして出てきます、このカメラの目線でいくらでも今流行りのPOV映画(1人称の映画)にできたはずなのに、あえて流行りに乗らないスタンスに感心しました。

 

海の『トレマーズ

 荒野で地中をうごめく人食い巨大ミミズと戦う、B級モンスター映画の名作『トレマーズ』が陸の『ジョーズ』と言われたのに対し、本作はZ級映画『シー・トレマーズ』以上に海の『トレマーズ』と呼ぶのに相応しい作品です。『トレマーズ』ではモンスターから逃げるために岩や屋根の上でストーリーが展開されたように、本作『ロストバケーション』でもほとんどが岩礁の上でのシーンなのです。

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念密に張り巡らされた伏線

  本作はセリフから小道具に至るまで、様々な形で伏線が張り巡らされています。画面に映る物のほとんどがその後の物語で何かしらの役割を果たすので見逃せません。

 

GoProとビーチに打ち上げられたサーフボード

 映画は少年がビーチに落ちていたGoProを拾うところから始まります。なんで操作方法が分かったのかとかそういう野暮な話は置いといて、少年がGoProをいじっているとそこに記録されていたのはGoProの持ち主がサメに喰われる映像でした。少年は驚いて助けを求めにその場を離れます。

 この時、ビーチに打ち上げられたサーフボードが映ります。サーフボードにはナンシーの物と同じマークが描かれていました。つまり時系列的にこのシーンはナンシーがサメに襲われた後だと分かります。

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ビーチの名前は

 ナンシーはビーチの名前を知りませんでした。移動中やビーチに着いてから現地の人に何度もビーチの名前を聞きますが適当にはぐらかされて結局聞くことができませんでした。この事が後に響いてきます。また秘密のビーチなため観光客はおろか現地の人でも一部の人しか訪れません。そのため助けを呼べないのです。

 

現地の若者達

 ナンシーがサーフィンをしていると現地の若者2人に出会います。彼らはナンシーにこの海では午後になると岩礁が現れること。クラゲのように指す毒サンゴがあることなどを教えてくれます。

 また若者のうち1人が頭にGoProを付けていて、オープニングに出てくるGoProの持ち主が彼であることが分かります。つまり彼はこの後…

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ナンシーの大学の専攻は

 ナンシーは大学で医学を学んでいました。サメに襲われ怪我した自分の足を身につけている限られた物で治療します。

 

クジラの死骸

 ナンシーがサーフィンをしていると鮫に体を食い千切られ海面に浮いたクジラの死骸を見つけます。サメに襲われたナンシーはとっさにこのクジラの死骸によじ登り難を逃れます。クジラの死骸からは鯨油が海に流れ出ています。この油が後にナンシーを救う事になります。

 

 この他にも海の向こうにある物が浮かんでいるのが見えたり、伏線は無数に張り巡らされています。そして、その全てが取りこぼされることなく回収されます。

 

ブレイク・ライブリーの圧巻の演技

 ナンシーの家族や現地の人などは脇役として、一応は出てきますが映画中盤からは完全にナンシーとサメ(あとたまにカモメ)しか画面には映らず、CGであるサメとカモメを省けばナンシーを演じたブレイク・ライブリーの独壇場な訳です。

 それはつまり映画の演技面では彼女に全てがかかっている、という事です。そんな大役を任されたブレイク・ライブリーですが、彼女は我々を裏切りませんでした。

 彼女が「痛い」と感じれば観客まで「痛い」と感じてしまうほどの熱演は素晴らしかったです。

 

カモメのスティーブン・シーガル

 ナンシーが岩礁に逃げ込むと、そこにはサメによって翼を怪我したカモメがいました。一緒に岩礁にいるうちに彼に愛着が湧いたナンシーはスティーブン・セガールをもじりスティーブン・シーガル(seagullは英語でカモメを意味する)と名付けたり、カニを捕まえて一度は自分で食べようとしたものの身が少なかったため彼に食べさせてあげたり、彼女の手で翼を治療してあげたりします。果たして彼もナンシーと一緒に、この岩礁から抜け出すことができるのでしょうか。

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 ちなみに彼にスティーブン・シーガルと名付けるくだりは字幕版だとスルーされています。せっかく緊迫した空気が和むいいシーンなのに勿体無い。

 

最高に気持ちいいラスト

 絶体絶命の中、ナンシーはいかにしてサメと戦うのか。いかにして陸に戻るのか。怒涛のラストシーンに、あなたも「気持ちえぇ〜」となること間違いなしです。

 

正統派サメ映画の元祖「ジョーズ」の再来

 私は本作を観るまで、サメに襲われたサーファーが岩場に逃げ込むというアイデア一本勝負でどこまでやれるかと、正直期待していませんでした。しかし、本作は低予算ながら昨今のサメ映画、それどころかモンスターパニックもの全般においても近年稀に見る良作です。さながら『ジョーズ』のような無駄の無いストーリーには感心します。

 

未見の方はBlu-rayを購入するなり、レンタルして観てみることをオススメします。

 

それでは(^ー^)/

 

Blu-ray

正統派サメ映画の金字塔

 おバカサメ映画の代表格