映画『プリズナーズ(2013)』ネタバレあり レビュー 感想「囚人とは誰のことなのか」
囚人とは誰のことなのか
今回紹介する作品は、公開から4年経った今も多くの謎を残しているこの映画。
『プリズナーズ(2013)』
監督
役名/キャスト
ケラー・ドーヴァー/ヒュー・ジャックマン
ロキ/ジェイク・ギレンホール
ナンシー・ヴァーチ/ヴィオラ・デイヴィス
グレイス・ドーヴァー/マリア・ベロ
フランクリン・ヴァーチ/テレンス・ハワード
あらすじ
アメリカの片田舎、ペンシルヴェニアで工務店を営むケラーは妻や子供達、親しい隣人らに囲まれて幸せに暮らしていた。しかし、そんな日常がある日を境に崩れ去ることになる。
感謝祭を祝っていた日のことである。ケラーの娘であるアナと、隣人であるフランクリンの娘ジョイが忽然と姿を消したのだ。
しかし、2人が姿を消した日の夜、誘拐犯と思われるアレックスが逮捕される。事件は解決へ向かうと思われたが、証拠不十分ということでアレックスは2日後あっけなく釈放されてしまう。
この事が許せないケラーは自らの手でアレックスを拘束、娘らの居場所を吐かせようと危険な行動に出る。
注意:以下、ネタバレを含みます
考察
タイトルにもなっている「囚人(プリズナーズ)」とは誰のことなのか。その答えは映画の進行とともに変化して行きます。
一人目、二人目の囚人
最初の囚人は拐われたアナとフランクリンの娘のジョイ。二人は感謝祭の日、ヴァーチ家からドーヴァー家に二人きりで向かった後消息を絶っています。その後、アレックス・ジョーンズに誘拐、監禁されたのではということになります。
三人目の囚人
三人目の囚人はロキが捜査中に神父の自宅の隠された地下室で見つけた、ミイラになった男。神父曰く過去に彼の元に告解に訪れた男性で、子供を16人殺したことを神父に打ち明けこれからも殺しを続けると聞いた神父が監禁したという。後に彼はアレックス叔父だということが発覚します。
四人目の囚人
四人目の囚人はケラーに監禁されたアレックス。証拠不十分で釈放されたアレックスを拉致、空き家に監禁し行き過ぎた拷問を始めます。
ポール・ダノって「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「それでも夜は明ける」でもボコボコにされてたけど最近こういう役ばっかり演じてますねw
五人目の囚人
五人目の囚人は第二の容疑者であるボブ・テイラー。ロキに拘束された彼は、取調室で何かに取り憑かれたかのように迷路を書き続けています。
六人目の囚人
六人目の囚人はケラー。彼は先に見つかったジョイの証言から犯人はアレックスの叔母のだと確信します。の自宅に上がり込み娘の居場所を吐かせようとするのだが返り討ちにあい庭に掘られた穴に閉じ込められてしまいます。
七人目の囚人
七人目の囚人はアレックス。彼はケラーに監禁され囚人となっていたが本当の意味で彼を囚人にしていたのは叔母のホリーでした。彼はホリー夫婦が息子を失った後に誘拐、洗脳されその後何年もの間、彼女が子供達を誘拐する手伝いをさせられていたのです。
最後の囚人
最後の囚人、それはこの映画を観たあなたです。あなたはこの映画を観るうちにその謎に囚われてしまったのです。
この作品は最初観たときと二度目観たときでは観え方が変わり、観た後もあのシーンはなんだったのだろう、と謎が謎を呼びます。あなたはこの映画に仕掛けられた謎という名の迷宮から抜け出すことができるでしょうか。
ケラーという人物
ケラーは何故ここまで警察を信用しないのでしょうか。それは彼がキリスト教原理主義者であり、聖書に記されたいつか起こりうる世界滅亡に備え、食料などを自給自足する技術を持ち、重火器や保存食などを自宅のシェルターに蓄えているプレッパーズと呼ばれる人だということが大きなヒントになる。映画の序盤、ケラーが息子に鹿を猟銃で撃たせるシーン、彼の車のバックミラーに十字架がかけられていること、彼の自宅の地下室に異常な量の食料が備蓄されている事などからこのことが分かります。
プレッパーズには愛国社が多い反面、自分達から銃を取り上げようとする政府や警察に反感を持っています。そのためケラーは警察を信じず、自分の手で娘を探し出そうとしたのです。
ロキという人物
熱心なキリスト教信者であるケラーとは逆に刑事のロキは非キリスト信者であり一つの宗教や思想にとどまりません。彼は全身に首にのイシュターの星、指にゾディアックの刺青が彫ってあったり、プロビデンスの目(フリーメイソン)の指輪をしていたり、干支の話をしていることからこのことが分かります。
巧妙に仕掛けられた謎の数々
迷路
ロキが第二の容疑者であるボブ・テイラーの自宅で見つけたのは壁一面に描かれた迷路でした。彼がここまで迷路に執着するのは彼が過去に誘拐され迷路を使ったマインドコントロールを施されたことが理由だということが判明した。彼を誘拐し洗脳したのが神父の家の地下でミイラになっていたアレックスの叔父です。
ボブがアレックスの叔父に殺されなかったのは彼が迷路を解いたことで解放されたからです。
地下室でミイラになっていた男性がなぜ子供達を誘拐し洗脳していたのか
アレックスの叔母と叔父は元々熱心なキリスト教徒でしたが、息子が癌で死んだことをきっかけに神に失望し、子供達を誘拐することで被害者の親族神などいないということを知らしめ、神に挑戦しようとしていたのです。
ケラーの父親
ロキがケラーの過去について調べると、彼の父は刑務所の看守で自殺したという記事が見つかります。しかし、このことは後の展開で触れられることはありません。ただ、ケラーが予期せぬ形で父と同じ看守になる道を歩んでいることが分かります。
この他にもこの作品いは未だに解かれていない多くの謎が存在しています。
今回は映画「プリズナーズ」において、プリズナー(囚人)とは誰のことなのか。について記事を書いてきましたが、これで本作のタイトルが単数系の「プリズナー」ではなく複数系の「プリズナーズ」だった意味も分かったと思います。