『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム(2019)』イースターエッグ解説 ネタバレあり
当記事は『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム(2019)』及び、MCU作品のネタバレを含んでいます。
MCU作品を全て鑑賞済みのうえ、読むことをお勧めします。
『スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム(2019)』
エンドゲームから8ヶ月
本作は『アベンジャーズ: エンドゲーム(2019)』から8ヶ月後の世界が舞台である。
本作のスーツ
・アイアン・スパイダースーツ
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)』でトニーから送られたスーツ。
特殊金属製で背中にアイアンクローを4本装備している。
・クラシック・コスチューム
『スパイダーマン/ホームカミング(2016)』でトニーからピーターに送られたスーツ。
ピーターは旅行には必要ないと判断し家に置いて行こうとしたがメイおばさんがお節介でスーツケースに入れた。
・ステルス・スーツ
プラハで炎のエレメンタルズを撃退する際にスパイダーマンのスーツだと怪しまれるからとS.H.I.E.L.D.から送られた目立たない色のスーツ。
原作にもステルス・スーツが存在するが黒に光るエンブレムと、似ても似つかぬ見た目をしている。
どちらかといえば『スパイダーマン: スパイダーバース(2019)』にも登場したスパイダーマンノワールのスーツに似ている。
原作のステルス・スーツ
ちなみに『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2015)』でS.H.I.E.L.D.からスティーブ・ロジャースへ送られたスーツもまたステルス・スーツと呼ばれていた。
キャプテン・アメリカのステルス・スーツ
・ホームメイド・スーツ
ピーターがトニーからアベンジャーズにリクルートされる前に使用していた手作りのスーツ。
本作ではミステリオに観せられた仮想現実の中でのみ一瞬だけ登場した。
・アップグレーデット・スーツ
ミステリオに敗北したピーターがプライベートジェット内の簡易ラボで製作したスーツ。
パラシュート、プラズマウェブなど様々な機能を搭載している。
原作に登場するスーペリア・スパイダーマンのスーツや『スパイダーマン(2002)』では使用される予定だったアレックス・ロスのコンセプトアートに似ている。
スーペリア・スパイダーマン
アレックス・ロスによる『スパイダーマン(2002)』のコンセプトアート
ウェブパラシュート
ベンおじさんの形見
ピーターが研修旅行の荷物を入れるのに使っていたスーツケースには"BFP"の刻印がされていた。
これは、ベンおじさんことベン・フランクリン・パーカーのイニシャルである。
本作より
機内エンターテインメント
ヴェネチアに向かう機内でピーターが映画を選んでいるシーンで画面に映っている作品は『THE SNAP(インフィニティ・ウォーのドキュメンタリー?)』『FINDING WAKANDA(ワカンダを探せ)』『Hunting Hydra(ハイドラ狩り)』などがあるがその中に『マイティ・ソー(2011)』や『アベンジャーズ(2012)』などに登場したエリック・セルヴィグ博士の『NOVA』という番組がある。
NOVAといえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』に登場したノバ軍のことだろうか。
セルヴィグ博士
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2015)』のノバ軍
原作のノバ
AC/DC - Back In Black
ピーターがプライベートジェット内のワークショップでスーツをアップグレードする際にハッピーが流した音楽はAC/DCのBack In Black。
この曲は『アイアンマン(2010)』『アイアンマン2 (2011)』でも使用されていたので、知っている方も多いのでは?
ちなみに、このラボでのシーンは『アイアンマン(2008)』のオマージュとなっており、スーツのアップグレードに勤しむピーターの姿に、今は亡き親友トニーの面影を見たハッピーが優しく微笑むシーンは涙モノだった。
本作より
『アイアンマン(2010)』より
ミステリオ
本作のミステリオ
本作ではアース833という別次元からきたヒーローとして登場。本編後半で実はトニー・スタークに恨みを持った科学者で、エレメンタルズとの戦いも、彼のパワーも、全てドローンとホログラフィック技術を用いて表現したフェイクだったことが発覚する。
原作のミステリオは本作同様に特殊効果を用いてヒーローを翻弄するヴィランである。
エンドロールでミステリオのスーツのデザイン案のメモ書きが映るが、アイアンマン、ソー、スパイダーマンなどのスーツを参考にしている事が分かる。
原作のミステリオ
ちなみに、本作でミステリオを演じたジェイク・ジレンホールは『スパイダーマン2 (2004)』でピーター・パーカー役のトビー・マグワイアが体調不良で降板するかもしれないとなった際に、彼の代役でスパイダーマンを演じる予定だった。(トビー・マグワイアの体調が回復し、復帰したため実現はしなかった)
また、映画『マイ・ブラザー(2009)』ではトビーとジェイクは兄弟役を演じている。
確かに、似た系統の顔をしている。
『マイ・ブラザー(2008)』より
マルチバースはフェイク?それとも…
ミステリオことベックがアース833から来たというのは事実ではなかった。アース833は原作にも登場し、キャプテン・ブリテンというヒーローがスパイダーUKとして活躍している世界である。
スパイダーUK
ムズムズ
本作では"ムズムズ"と呼称されていたピーターの第六感は、原作ではスパイダーセンスと呼ばれているスパイダーマンの危機感知能力である。
『スパイダーマン/スパイダーバース(2019)』のスパイダーセンス
B.A.R.F.システム
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)』でトニーが式典で披露したホログラフィック技術B.A.R.F(ゲロ)システムはミステリオことベックの開発したシステムを応用したモノだったことが今作で明らかになった。
しかし開発者であるベックに対し、トニーが雑な扱いをし、更には口答えをした彼を解雇してしまったために恨みを買うこととなってしまった。
『シビルウォー: キャプテン・アメリカ(2016)』より
さらに、ドローン技術を開発した科学者は『アイアンマン(2008)』でオバディアの元で働いていた人物であることも明らかになる。
『アイアンマン(2008)』より
クラッシャー・ホーガン
メイおばさんのホームレス支援センターのシーンでハッピーの後ろに立てかけられている看板には、クラッシャー・ホーガンというプロレスラーの名前が書かれている。
クラッシャー・ホーガンとは『スパイダーマン(2002)』にも登場したプロレスラーで、ピーターが腕試しのために対決した人物である。
本作より
『スパイダーマン(2002)』のクラッシャー・ホーガン
原作のクラッシャー・ホーガン
タイガー
ヴェネチアでMJは虎の絵が描かれた服を着ているが、これは原作でMJがピーターのことをタイガーと呼んでいることに由来する。
原作より
スパイダー・モンキー
ステルス・スーツのスパイダーマンをネッドがナイト・モンキーと名付けた。
MJに「ナイト・モンキーなのにスパイダーマンと同じ蜘蛛の糸を使うの?」と言われたピーターがとっさに「スパイダー・モンキーなんじゃない?」と言うシーンがあるが、スパイダー・モンキーは原作にも登場する。
原作のスパイダー・モンキーとは、アース8101という高知能な猿やゴリラの住む世界のスパイダーマンである。
スパイダー・モンキー
エレメンタルズ
原作のエレメンタルズは『Supernatural Thriller#8』で初登場した炎を操るヘルファイア、風のゼファー、土のマグナム、水のハイドロンからなる集団であり本作に登場するそれとは違った見た目をしている。
原作のエレメンタルズ
本作のエレメンタルズ
・土のエレメンタルズ
フューリーとマリア・ヒルがメキシコで遭遇。
本作の土のエレメンタルズのモデルとなっているのは『スパイダーマン3 (2008)』にも登場したサンドマンである。
本作より
ちなみに、このシーンで映っている車のナンバープレートには"463"という数字が書かれており、これはサンドマンが初登場した『The Amazing Spider-Man#4 (1963)』を指し示している。
『The Amazing Spider-Man#4 (1963)』
・水のエレメンタルズ
ヴェネチアで研修旅行中のピーターと科学クラブ一行と遭遇。
本作の水のエレメンタルズのモデルとなっているのは、USJのアトラクションにも登場するハイドロマンである。
水のエレメンタルズ
ちなみに、本編ではカットされていたが、トレイラーで映っていた船に書かれた"Asm212"とは『The Amazing Spider-Man#212』のことを指し示しており、この号はハイドロマンの初登場した回である。
トレーラーより
『The Amazing Spider-Man#212』
・炎のエレメンタルズ
プラハに出現しスパイダーマンとミステリオが共闘し撃退したエレメンタルズの一体。
本作の炎のエレメンタルズのモデルとなっているのは、モルテンマンという金属製の体を持ち高熱を発することのできるヴィランである。
本作より
ちなみに、ロンドンのタワー・ブリッジを襲う合体エレメンタルズから逃げるシーンで映ったナンバープレートには、モルテンマンが初登場した『The Amazing Spider-Man#28 (1965)』を指し示す"2865 SEP"という文字が書かれている。(SEPはSeptember"9月"を表している)
本編より
『The Amazing Spider-Man#28 (1965)』
ボルトロン
合体エレメンタルズを見たデル先生が「パワーレンジャー(日本のスーパー戦隊の海外版の名称)みたいだ!」と言ったのに対してハリントン先生が「合体ならヴォルトロン(百獣王ゴライオンの海外名)だ!」と言うシーンがある。
ヴォルトロンといえば『デッド・プール(2015)』でもネタにされていた。
本作より
ヴォルトロン(百獣王ゴライオン)
『デッド・プール(2015)』より
シールドスロー
タワー・ブリッジでスパイダーマンが鉄製の看板とドローンの部品を改造した武器を持ちドローン群に立ち向かうシーンがあるが、これは『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)』でキャプテン・アメリカがムジョルニアを持って戦うシーンへのオマージュだろうか。
『アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)』より
ハッピーはドローンに向かって盾を投げて撃退しようとするが、うまく投げられず「キャップってすごいんだな」と言う。
『キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー(2011)』より
エンドクレジット後の映像
・セルフィー
NYの街をウェブスイングしながら自撮りをするスパイダーマン。PS4のゲーム『Marvel's Spider-Man』でもカメラモードで自撮りをすることができるが、このシーンはそのことへのオマージュだろうか。
本作トレーラーより
PS4『Marvel's Spider-Man』より
・アベンジャーズタワー跡地
『スパイダーマン: ホームカミング(2017)』で引越しをしていたアベンジャーズタワー。本作のポスト・クレジットシーンでは別の建物に建て替えられていることが確認できる。
アベンジャーズタワーの跡地に建ったのはノーマン・オズボーンの会社、オズコープか。それとも、ファンタスティック・フォーの本拠地であるバクスタービルディングだろうか。
『アメイジング・スパイダーマン2 (2014)』のオズコープ
原作のバクスター・ビルディング
・定番のウェブスイング
スパイダーマン作品ではお馴染みとなっているMJ(アメイジングではグウェン・ステイシー)とのウェブスイングがMCUでも実現した。
本作より
『スパイダーマン(2002)』
アニメ『スパイダーマン(1994)』
・J・ジョナ・ジェイムソン
なんと、サム・ライミ版スパイダーマンではお馴染みとなっていたJ・ジョナ・ジェイムソンが本作にも登場!しかも彼を演じているのはライミ版と同じJ・K・シモンズ!
本作ではデイリー・ビューグルはネットニュースチャンネルになっているようだ。
サム・ライミ版のJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)
・スパイダーマンの正体は…
ミステリオの作ったフェイク映像がニュースで取り上げられ、スパイダーマンは悪党に仕立て上げられてしまう。さらに、スパイダーマンの正体はピーター・パーカーであると勝手に公表されてしまった。
原作では、シビル・ウォーの最中、トニー側に付きヒーロー登録法に賛同したピーターが報道陣の前で自ら自身の正体を公表するという展開がある。
しかし、スパイダーマンの正体を知ったキングピンによって差し向けられた殺し屋の流れ弾がメイおばさんに被弾し殺されてしまう。
MCUでも同じ展開になってしまうのだろうか。
原作コミック『シビル・ウォー: スパイダーマン』より
殺し屋の撃った流れ弾に被弾したメイおばさん
・スクラル
本作に登場したニック・フューリーとマリア・ヒルの正体は実は『キャプテン・マーベル(2019)』に登場したスクラル人のタロスとその妻のソレンであることが明かされる。
劇中でのフューリーの言動に違和感があったのはこのせいである。
『キャプテン・マーベル(2019)』のタロス
・本物のフューリーは
地球のタロスからの通信を受けた本物のフューリーは宇宙のどこかにあると思われる施設でスクラル人達の指揮をとっていた。
タロスとフューリーは一体いつから入れ替わっていたのだろうか。
ちなみに、この時フューリーが観ていた砂浜の映像はタヒチだと思われる。
『アベンジャーズ(2012)』で死亡し、その後S.H.I.E.L.D.によりクリー人の体液を使用し極秘裏に復活したエージェント・コールソンが見せられていたのもタヒチの映像だったが、何らかの関係があるのだろうか。
『エージェント・オブ・シールド』ファイナルシーズンより
スタン・リーとスティーブ・ディッコに捧ぐ
全ての映像が流れ終わった後「スタン・リー、スティーブ・ディッコに捧ぐ」の文字で本作は締めくくられる。
スパイダーマンを創造した立役者である二人は共に2018年に亡くなった。
スタン・リーとスティーブ・ディッコ